← いやいや待って

本当に儲かるなら、自分でやるでしょ

物販スクールの利益構造

「未経験でも月商100万円」と語る人が、なぜその手法を売るのか。 自分の帳簿1年分を使って、数字で説明します。金額は伏せて、比率だけを出します。

1. 教えるほうが儲かる

「本当に儲かるなら、人に教えずに自分でやればいい」。よく言われる指摘で、これは正しいのですが、 返ってくる答えはたいてい「教えるのが好きだから」です。ここで話が止まってしまいます。

止めずに、利益の出かたで考えます。

物販は、仕入れた金額が先に出ていきます。売れて初めて回収でき、売れ残れば在庫として残ります。 保管にも費用がかかります。売上を2倍にするには、仕入資金も2倍必要です。

情報を売る商売には、この制約がありません。教材は複製しても原価が増えず、受講者が10人でも100人でも、 作る手間は最初の1回だけです。売上を10倍にするのに、必要な資金は増えません。

同じ売上をあげたとき、手元に残る割合が違う。だから講師になる。
「儲からないから教える」のではなく、「教えるほうが儲かる」。

これは怠慢でも詐欺でもなく、合理的な選択です。問題はその次にあります。

2. 私の帳簿では、こうなっていた

個人でAmazonに出品しています。ある1年分を、部門ごとに集計しました。

項目対売上
粗利29.1%
荷造運賃11.7%
販売手数料11.4%
その他経費7.3%
営業利益-1.2%

粗利が29.1%あっても、営業利益はマイナスでした。 送料と手数料だけで、売上の23%が消えます。

ではなぜ続けているのか。ポイントがあるからです。 買い物に付いてくる販促ポイントを収入に入れると、この年は8.5%の黒字になります。 つまり利益のすべてがポイントで、商品を売る行為そのものは赤字でした。

これが「再現性がない」ということ

ポイントの還元率は、私が決めているのではありません。プラットフォームの販促予算です。 制度が変われば、翌月から赤字の側だけが残ります。

「月商100万円」「年商1億円」と語られるとき、その利益がどこから出ているかは語られません。 還元率の高かった時期の実績を、いつでも再現できるかのように見せることができます。

3. 同じ年に、まったく違う数字も出ている

同じ帳簿の中に、対照的な部分があります。海外コスメを、ある卸から仕入れて売っていた分です。 ポイントは一切含めていません。

項目対売上
粗利38.6%
販売手数料12.0%
仕入送料0.1%
差引+26.5%

同じ人間が、同じ年に、同じ場所で売っています。手順も同じです。 それでもマイナス1.2%とプラス26.5%に分かれます。

違いは手法ではなく、仕入先だった

26.5%を生んでいたのは、誰でも知っている大手ではなく、小さな卸でした。 特別な技術を使ったわけではありません。その卸を知っていたことが、利益そのものでした。

4. だから、教えられない

ここから、スクールという商売の構造的な矛盾が出てきます。

良い仕入先とは、みんなが知らない仕入先です。100人に教えれば100人が同じ先に群がり、 奪い合いになって粗利は溶けます。教えた本人の分まで消えます。

だから講師は教えません。教えられません。では何を教えているのか。 すでに知られてしまった、薄利の仕入先とその周辺の手法です。

悪意で薄利を教えているというより、薄利になったものしか教えられないという構造です。

この記事も、卸の名前は書きません

書いた瞬間に、その26.5%は消えるからです。批判している側も、同じ理由で書けません。 それが「教えられないものが利益を生んでいる」ことの、いちばん確かな証拠です。

5. 手口の流れ

  1. 語る ── 売上や、一度当てた話をする。売上と利益を分けずに話すのが要点
  2. やらせる ── 本人はすでに手を引いた、薄利のやり方を教える
  3. 小さく成功させる ── 1個売れれば足りる。「稼げた」という体験が作られる
  4. 感謝が生まれる ── 生活はできないが、体験談は書ける
  5. 本命を売る ── ここで次の、より高額な商材が出てくる

3番目が肝です。教わる手法は、生活が成り立つほどは稼げないが、体験談が1本書ける程度には動きます。 だから嘘とも言い切れない。追及しにくく、当人にも気づきにくい部分です。

売り文句が「月商」である理由

この手の募集でよく見る数字は、だいたい2つに分かれます。

売り文句年商にすると私の実測を当てると
月商100万円(物販スクール系)1,200万円営業利益マイナス1.2%なら手元はマイナス
月商10万円(フリマ転売系)120万円粗利30%でも月3万円。送料と手数料でほぼ残らない

どちらも売上の数字です。利益ではありません。

なぜ売上で語るのか。利益で言うと、売り文句にならないからです。 私の実測では、年商700万円で営業利益はマイナスでした。 月商100万円は私の1.7倍の規模ですが、同じ利益率なら手元に残るものはありません。

「月商100万円」は言えても、「月の手取り2万円」では誰も申し込みません。 売上と利益を分けずに話すのは、この差を見せないためです。

広告を見たら、まずそれが売上か利益かを確かめてください。 利益が書いていなければ、書けない理由があると考えたほうが早いです。

規模を大きくしても、利益率は変わらない

「いまは小さいから残らないだけで、規模が大きくなれば」と考えたくなります。 そうはなりません。

大型量販店で仕入れて売る、いわゆる店舗せどりで年商1億円ほどを回している人が、 物販のオンラインサロンで実際に語っていた数字です。その規模で経常利益率は1〜3%。 金額にすると年100万〜300万円、月に直すと8万〜25万円になります。

1億円分の商品を仕入れ、運び、保管し、出品し、発送して、その額です。

さらに上があります。有名なツールを無料提供している年商10数億円のメガセラーも、 手元に残るのは3%程度だと話していました。

年商手元に残る率
700万円(私の実測)-1.2%
1億円1〜3%
10数億円約3%

規模が100倍以上になっても、率は数パーセントのままです。 「いまは小さいから残らないだけ」という説明は、ここで否定されます。

ただし、10数億の3%は大金です

正確に書きます。率は上がりませんが、金額は増えます。 10数億円の3%なら、年3,000万円を超えます。これは立派な商売です。

問題は、そこへ行くために必要なものです。3,000万円を残すには、10数億円分の在庫を回す資金と、 それを動かす体制が要ります。一人でできる規模ではありません。

つまりこの商売は、率で稼ぐのではなく、量で稼ぐ形です。 量を増やせば、必要な資金も、人手も、置き場所も、同じだけ増えます。 「一人で」「元手をかけずに」という条件とは、根本的に両立しません。

※どちらも、物販のオンラインサロンで本人が話しているのを直接聞いた数字です。 帳簿を見せてもらったわけではないので、本人の申告である点は差し引いてください。 なお、この種の数字が出てくるのはサロンの中だけです。募集ページに載るのは年商のほうです。

規模は利益率を変えません。変わるのは仕入先と、扱うものが自分のものかどうかです。 同じ帳簿の中で、卸から仕入れた分だけがプラス26.5%になっていたのが、その差です。

そしてこの人は、YouTubeと物販スクールで稼いでいました。

ここまで読んでいただいた話が、そのまま形になっています。 年商1億円を回しても利益率が1〜3%だから、教えるほうへ移った。 第1章に書いた「教えるほうが儲かる」の実例です。

そして募集では、YouTubeとスクールの収入ではなく年商1億円のほうが語られます。 嘘は言っていません。ただ、その人がいま実際に稼いでいる商売は、教えている商売ではないというだけです。

「かんたん」「リスクなし」は、警告として読む

募集でよく使われる言葉です。良いことのように書かれていますが、 中身を言い換えると参入の障壁が無いということです。

かんたん = 誰でもできる = すぐに人が集まる = すぐに稼げなくなる

障壁が無いから、教われば誰でも同じことができます。そして同じ仕入先に同じ人数が群がり、 価格が下がって粗利が溶けます。かんたんであること自体が、賞味期限の短さを表しています。

逆に、手間がかかる・資金が要る・覚えることが多いものは、参入する人が少ない分だけ長持ちします。 募集の言葉としては弱いので、まず使われません。

「かんたん」と書いてある商売は、かんたんに終わります。

6. 誰に売るかで、儲けが決まる

この商売がもっとも儲かる相手は、その分野の判断材料を持っていない人です。理由は4つあり、 どれも利益率に直結します。

条件売る側にとっての効果
中身の良し悪しを判定されない教材に金をかけなくてよい
他と比較されない相場ができず、値下げ圧力がかからない
稼げなくても自分のせいだと思う返金要求もクレームも来ない
小さな成功で強く感謝する本人が宣伝役になり、集客費が下がる

3番目が決定的です。普通の商売は、期待外れなら客が怒ります。この商売は 「努力が足りなかった」と客のほうが引き受けてくれます。 期待に届かなくても、売る側にコストが発生しない構造になっています。

裏返せば、目利き相手の商売は儲かりません。だから「未経験者歓迎」「知識ゼロから」を掲げるのは、 優しさではなくターゲティングです。

7. 説明会で聞ける、2つの質問

その1 この手法は、経験者にも売れていますか

本当に有効なら、価値が分かる人ほど買うはずです。物販の経験者、投資の経験者、同業の職人。 ところが募集ページに並ぶのは「未経験から」ばかりです。 経験者に売れないものを、未経験者に売っているという一点で構造が見えます。

その2 受講生は何人が、同じ仕入先を使いますか

全員が同じ先から仕入れるなら、その先はもう終わっています。 「仕入先は教えません、探し方を教えます」という答えなら、 利益の源泉は渡さないと明言しているのと同じです。

8. では、まともなやり方は

受講料を回収する計算をしてみると分かります。差引26.5%が残る良い仕入先を持っていても、 受講料の約4倍の売上を作って、ようやく元が取れます。 残らない側(マイナス1.2%)なら、いくら売っても回収できません。

9. だから私も、切り替えています

ここまで書いておいて、私自身がその物販をやっています。だから最後に書いておきます。

数字を分けて見た結果、利益の源泉が自分の外側にあることが分かりました。 プラットフォームの販促予算と、他人がまだ知らない卸。どちらも、相手の都合で消えます。

そこで転売から、自分で設計して作るものへ移しているところです。 自分の設計と技術から出る利益なら、誰かの都合では消えません。

批判ではなく、自分の帳簿を見た結果として動いています。 同じ数字を見れば、同じ結論になると思います。